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映画『ビューティー・インサイド』感想・みどころ!!

6月 15, 2023

出典:GAGA公式チャンネル『ビューティー・インサイド』予告編

123人1役!!!

びっくりするような奇抜な設定で普遍的な問いかけをしてくる。

映画『ビューティー・インサイド』を一言で表そうとすれば、こうなるでしょうか。

眠り、目が覚めるとそのたびに姿が変わってしまう主人公キム・ウジン。

その変わりようは実に多様で、男性、女性、老人、子ども。アジア系、ヨーロッパ系、そして

アフリカ系となんでもアリ!!

そんなウジンがある女性に一目惚れします。なんとか想いを伝えたその相手がホン・イス。

ウジンとイス。

2人が心を通わせ、ときに傷つき、そして出した答えはー。

設定にファンタジー要素が際立つ一方で、2人が直面し、向き合ったものは、

誰もが1度は悩んだことがある問いかけー“愛ってなんだろう”ということに尽きます。

その過程をとても丁寧に描写した本作。みどころを見ていきましょう。

基本情報

監督:ペク 長編1作目

原題:The Beauty Inside

製作:2015年

日本公開:2016年1月22日

キャスト

パク・ソジュン(キム・ウジン)

ハン・ヒョジュ(ホン・イス)

上野樹里(キム・ウジン)

イ・ジヌク(キム・ウジン)

キム・ジュヒョク(キム・ウジン)

ユ・ヨンソク(キム・ウジン)

チョン・ウヒ(キム・ウジン)

イ・ドンフィ(サンベク) ウジンの親友

ムン・スク(ウジンの母親)

コメディ要素がかなり強い設定、なのにラブロマンス

123人で1役の主人公

聞いたことがないですよね。1人2役とか、分かります。「はぁはぁ、そういうやつね。」

みたいな感覚で理解できます。

本作の主人公は、そのキャラクター自体がひとつのみどころになる存在です。

よく映画として成立させましたよね。

主人公キム・ウジンを演じたのはなんと123人。

(オーディションに参加した俳優を含め、ということらしいです)

ウジンは眠りから覚めるたびに姿が変わってしまうので、ざっくり言って、

場面が変われば主人公の見た目が変わっています。

どれがウジンか、追いかけていくだけでも面白く、そして大変です。

(ちなみに、上野樹里さんは作中、ある日のウジンとして登場します。

ちらっと出てくるというのではなく、とても重要な場面での出演です。お楽しみに!!)

そんな、現実には考えられない境遇にあるウジンが、それによって感じる生きづらさや、

他の人と同じように抱く恋心、気の許せる友人にだけ打ち明けられる事情など。

本作が描くのは、そこに向き合う内面的なものです。

コメディ色が強くなるのかな、と思いきや、そうはなりません。

ウジンの心情を本当に丁寧に(しかも役者が目まぐるしく入れ替わりながら)描いていくのです。

徹底してラブロマンスなんです。

主人公ウジンの苦悩と決意

人に会うのを極力避けて暮らすウジン

18歳の誕生日を境に、眠りから覚めると別人になってしまうという、

かなり特殊な運命を背負ったウジンは、極力人に会わずに済むライフスタイルを構築します。

彼が家具デザイナーとして働くのは、

極力人に会わずに済むから

という側面がとても大きいように見えます。

そんなウジンはこれまで(つまり、イスに一目惚れするまで)

どれほどの孤独や疎外感、人と関わることへの恐怖を感じてきたことでしょう。

そういうものを克服し、乗り越えようとしないとウジンはイスをデートに誘えなかったし、

まして自分のことを話すなんてできなかったでしょう。

それだけウジンにとってイスとの出会いは衝撃的なものだったのだろうと思います。

イスに一目惚れ!!ウジンの決意ー告白

さわやかな青年の姿で目覚めたある日、ウジンはイスをデートに誘います!

「よっしゃ!!」

ウジンの気持ちはそんな感じでしょうか。

同じ姿で変わらずに過ごせるように3日も寝ずに、睡魔と戦いながら過ごすウジンは

本当にかわいいです。頑張れ!!

ウジンを見守る2人

作中にウジンが心を開ける相手が2人だけ登場します。

1人はウジンの母、もう1人は親友のサンベクです。

それだけ?と思うかもしれませんが、ウジンの境遇や心情を理解できるかという点でも、

また、ウジンがイスに恋をして彼女に自分の秘密を打ち明けるまでの葛藤にスポットを当てる

という意味でも、ここが多いと全体がぼやけてしまいますからね。

個人的には十分なんだと思います。

親友のサンベクは本っ当に貴重な存在です。ウジンにとっても、本作にとっても。

自分の秘密を深刻に打ち明けたウジンの心配をよそに爆笑してみたり、

シリアスになりそうなこの映画のなかで、

ほっと一息入れさせてくれるのがサンベクなんですね。

ウジンの母は必要以上に何かを話したりしません。

ただ、必要なとき、ウジンが頼ってきたときには、

ちゃんと話を聞いてくれるし、話してくれます。

ウジンの母も、サンベクも

ウジンのことを理解し、そして傷つかないよう願いながらやさしく見守っています。

この2人の眼差しに乗せられて、僕たちも一緒になってウジンのことを心配している。

気がつくと、そんな風にして作品に入り込んでしまいます。

2人は僕たちの案内人でもあるんですね。

不変の問い「愛とは?」その葛藤をイスの視点から

姿が変わる人を愛するということ

今度はイスの視点から、見てみましょう。

初めてウジンに誘われたとき、イスは戸惑ったでしょうね。

「今度ね」って言ってるのに

「今日じゃなきゃダメ」

なんて言われたら、そりゃ強引だなーとか思っちゃいます。

“日ごとに変わるウジンの外見を笑いに変えながら、自分たちなりの関係を作っていこう。”

イスはとても前向きな気持ちでウジンと付き合うことにします。

ウジンの作る家具を通して彼の自分への気持ちを感じながら、

「ちゃんと愛していける」

イスはそう思ったのかなと。

大切なのは見た目じゃない。その人の内面なんだ。

まるで使い古されたような恋愛観で、だれもが納得できるでしょう。

ただ本作の魅力は、安易にそこに着地しないところにあります。

ウジンとの関係に悩み始めるイス

作中に象徴的なシーンがあります。

まずは、街中で待ち合わせをしているウジンとイス

ウジンはイスを見つけて、驚かせようと声をかけます。

ごく普通の恋愛であれば、戯れ合う2人で済む話なんですが、

その日初めて会うとき、イスにはウジンが分かりません。

どんな姿をしているか、全く分からないんですね。

イタズラっぽく近づいたウジンに対し、イスは怒りをぶつけますが、

このとき初めて外見が変わる人を愛することの難しさと怖さを実感したんだと思います。

それは観ている僕たちも同じ気持ちでしょう。

そしてもう1つ。

イスがウジンとのことに悩み始めた頃のこと

姿は毎回違う。だけど「この人はウジンだ」と自分に言い聞かせて身を委ねて身体を重ねる。

絶対とは言えない。ただ相手の存在を感じようとする。

計り知れない恐怖と、それを押し殺して信じようとする気持ち

本作は、こういうシーンを通してダイレクトに観ている僕たちに投げかけます。

「それでも、本当に外見なんて大切じゃないと言える?内面だけで愛せると自信をもって言える?」と。

周囲(イスの職場の同僚たち)の視線に苦しむイス

イスの職場の同僚たちは、もちろんウジンの事情を知りません。

そんな彼らは作中で

「普通、そう見えるよね」

という一般的な声を代弁する役割を持っています。

「イスに恋人ができたらしいよ。どんな人?」

といったものから始まり、やがて

「イスって相手をコロコロ変えて遊んでる?」

というような(事情を知る)僕たちからすれば、ひどい言いがかりに近いような

噂が広がっている事態に直面します。

イスは気丈に振る舞い続けるものの、この特殊な恋愛はイスを蝕んでいきます。

そうしてイスはカウンセリングを受け、

薬を飲まなければ眠れないほどに追い詰められていきます。

イスがたどり着いた答え、愛するということ

ウジンとイスの関係は一度終わりを迎えます。

ウジンは母から、父も同じだったことを聞き、

母もかつてイスと同じように苦しんだことを知ります。

それ故、イスのもとから離れることを選びました。

やがて10ヶ月が過ぎた頃。

気持ちも落ち着き、自分とウジンの関係について冷静に見つめ直せるところまで回復した頃、

イスは、ウジンがチェコにいることを聞き、会いに行きます。

イスが自分に会いに来たと知ったウジンは、最初は別人だと言い張ります。

しかし、イスが覚悟をもって自分のことを想ってくれているのだと分かり、

ようやく2人は再び心を通わせることができました。

まとめ

恋愛は、外見で決まるのか。内面がより大切なのか。

普遍的な問いに、見事なまでに真摯に向き合い続けた本作。

結局のところ、外見か内面かの二択になるような単純な図式ではなくて。

相手を知ろうとすること、相手の心に寄り添うこと。そこに尽きるのかなと。

ウジンの苦しみと、イスの苦悩と。

正直、ここまでしないと結ばれないのか。と胸に迫る2人の物語に泣かされたのは僕だけでは

ないはず。

ちなみに、監督は長編1作目だそうです。もうね、すごい、の一言です。

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