『タイタニック』は1997年に公開された、ジェームズ・キャメロン監督の作品です。本作は、アカデミー賞14部門にノミネートされ、作品賞と監督賞を含む11部門を受賞した大ヒット作となりました。
1912年、当時世界最大級の豪華客船として華々しく出航したタイタニック号。
イギリス南部サウサンプトンの港を出て、目指すはアメリカ、ニューヨーク。船には、婚約者と共にアメリカへと旅立つローズと、画家志望の青年、ジャックも友人のファブリッツィオと一緒に乗船します。
順調な船旅は、途中氷山に接触したことで事態が一変。「夢の船」は一転して沈没を避けられない状況に直面します。
沈みゆく船の中で船員も乗客もパニックに陥ります。そんな中で垣間見える、人間の脆さや弱さもリアルに描かれるなか、ジャックとローズは愛し合い、互いを信じることに活路を見出します。
今なお多くの人を魅了する映画『タイタニック』のみどころを見ていきましょう!
基本情報

監督・製作・脚本・編集:ジェームズ・キャメロン
音楽:ジェームズ・ホーナー
キャスト
レオナルド・ディカプリオ(ジャック・ドーソン)
ケイト・ウィンスレット(ローズ・デウィット・ブケイター)
ビリー・ゼイン(キャルドン・ホックリー) ローズの婚約者
フランシス・フィッシャー(ルース・デウィット・ブケイター) ローズの母親
ダニー・ヌッチ(ファブリッツィオ・デ・ロッシ) ジャックと共にタイタニックの3等船室の切符を手に入れた友人
ビル・パクストン(ロック・ロベット) 『碧洋のハート』を探すトレジャーハンター。本作でMrs.カルバートが過去を話すきっかけになった絵を発見した
グロリア・スチュアート(Mrs.カルバート) 1996年のローズ
スージー・エイミス(リジー・カルバート) Mrs.カルバートの孫娘
キャシー・ベイツ(マーガレット・“モリー”・ブラウン) タイタニックの1等船室の乗客。身分の低いジャックの手助けをした女性
バーナード・ヒル(エドワード・スミス) タイタニック号の船長
ジョナサン・ハイド(ブルース・イズメイ) タイタニック号を建造した会社ホワイト・スターライン社の社長
ヴィクター・ガーバー(トーマス・アンドリュース) タイタニック号の設計主任
ルー・ポルター(イジドー・ストラウス) 妻と共に客室のベッドで最期を迎えた老夫婦の夫
エルザ・レイブン(アイダ・ストラウス) 救助ボートに乗れない夫と共に船に残り客室のベッドで最期を迎えた老夫婦の妻
ジョナサン・エヴァンス=ジョーンズ(ウォレス・ハートリー) タイタニックの楽団のヴァイオリニスト
身分の違いを超え、困難に直面しても愛し合う2人

上流階級と労働者階級。
家族のためだとわかってはいるが、政略結婚を強制されるなど、自由のない上流階級の令嬢ローズ。
画家として成功することを夢見て乗船した、貧しいが自由なジャック。
ジャックとローズは、そんな状況の中巡り会います。
本来なら交わるはずのない運命が交錯し、2人が偶然にも巡り会い、心惹かれてゆく。
ジャックとローズの愛は、それぞれが置かれた立場からもすでに悲劇性を孕んだものでした。
階級が違うということは、それはそのまま世界の違いを意味します。
しかし、階級は低くとも自由を謳歌するジャックの姿は、ローズにとっては眩いものだったかもしれません。
ジャックは、あらゆる方法でローズの心を解放しました。
惹かれ合うのもまた、当然のことだったように思えてきます。

運命をひとつ乗り越えようと心に決めた矢先に、新たな試練。試練というにはあまりに絶望的な状況。
船が沈み、冷たい海に投げ出された後、ローズを乗せたドアに自分は乗れないと分かった時に、ジャックは覚悟したでしょうか。
いずれにしても、自分は最期まで諦めない。
だからローズにも諦めさせない。
ローズのことを愛するが故のジャック選択と、それを理解してジャックとの約束を守るローズ。
何度観ても、この2人の運命に胸を打たれてしまいます。
船内がパニックになっても演奏を続ける楽団の音楽家たち

優雅な船旅に華を添える、楽団の演奏。平穏な中ではなんて事のないBGMのように感じていても、パニックになり、殺気立ち、皆動揺している中では、全く違ってきます。
誰1人聴いていないとしても、そんなことはわかっている。それでも演奏を続ける。
流れてくる音楽は、その場で慌てふためく人々にとっては、気に留める余裕なんてない代物。あるいは、楽団の人たちが願ったように、誰かの心を救ったかもしれません。一方で、観ている私たちには、同時に、その時が迫る緊迫感と悲劇性を際立たせるものとしても効果が抜群だったように感じられます。
極限状態の中で乗客それぞれが選んだ愛のかたち


沈みかけた船上で、救助ボートに乗れるのは、まずは女性と子どもたち。
一緒に生き延びたいと願ってもそれが叶わないことはあったでしょう。実際には、そういうケースの方が多かったかもしれません。本作の中でも、それぞれ何らかの答えを出した人たちが描かれています。
自分だけ1人で助かることを望まず、最期のときまで一緒にいようと小さなベッドで身を寄せ合う老夫婦。
決して不安にさせまいと、本の読み聞かせをしながら眠りにつこうとする兄弟とそれを見守る母親。
自分たちの力ではどうすることもできない、およそ希望を見出せない極限状態のなかで、私たちは一体どのような選択をするでしょうか。
誰もがジャックのように勇気ある、希望を捨てない道を選び続けることができるでしょうか。
難しいかもしれません。
それでも、大切な、愛する人のためにできることは何か。
そんなことを思うのではないでしょうか。
老夫婦も子どもを見守る母親も、先に希望を見たわけではありません。それでも愛する人のための選択をしました。
絶望が画面を覆い尽くそうという中、こういう名もなき人々の愛のかたちを見て
胸が締め付けられ、けれど同時に少しだけ救われるような気持ちになりました。
きっと同じように感じたのは僕だけではないはず。
音楽
見渡す限りの大海原や楽しいダンス、ジャックとローズの息遣いまでリアルに感じ取れるデッサンの最中。本作で映画の世界に私たちを引き込むのに音楽は欠かせない要素です。楽しく踊り、緊張し、パニックに陥る。希望を見出し、やがて無事に辿り着く。
出航から到着までのあらゆる時間が、音楽だけでもリアルに思い返せそうな気さえしてきます。
セリーヌ・ディオンが歌う「My heart will go on」もまた、本作が大ヒットするのに大きな役割を果たしたのではないか。そんなことを思います。
今聴いてもなお、いい曲ですね。
まとめ

本作は、トレジャーハンターが発見した1枚のデッサンをきっかけに、事故を生き延びたローズが当時のことを話すという形で進行します。
場面が現代に戻り、年老いたローズが話を終え、『碧洋のハート』をこっそりと海に投げ捨てるところなど、最後まで印象的なシーンに溢れています。
ジャックと悲劇的に別れても、決して諦めることなく生き延びたローズ。
その後の人生の中で、ジャックとの約束の数々を果たしたことが次々と描かれるなど、2人の愛のかたちはいつまでも僕たちの胸を打つものだと、改めて感じられます。
初公開から随分と時間が経ちましたが、多くの人の記憶に今なお残る作品ではないでしょうか。